代表者メッセージ

脱英会話のすゝめ

毎年「世界英語力ランキング」が発表されます。
2021年の日本は、112ヶ国中78位とのことです。

どのようなデータに基づいて調査されているのか信憑性は分かりません。
でも、もしその結果が正しいのであれば、
その原因は「英会話」という3文字にあります。

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「英会話」という言葉は、戦後の日本で生まれた和製漢語です。
文字通り「英語で会話すること」を目的とする言葉です。

「英会話」は、日本にしか存在せず、
漢字圏の人でもこの言葉には違和感を覚えると言います。

文字通り日本人は、会話をするために英語を学んでいます。
しかしながら「会話」は手段です。
「英会話をやる」ということは、手段を目的にするということになります。

「手段の目的化」は、学習者を先の見えないループに陥らせます。
最初は楽しい気分が味わえますが、
やがて伸び悩み、飽きが諦めとなり、挫折へ導かれてしまいます。

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そんな日本も外国語力が世界最高レベルだった時代があります。

「漢学」を取り入れ論語や仏教をはじめとする進んだ思想文化を吸収した漢や唐の時代。
「蘭学」を学び「解体新書」をはじめとする最先端の実学を学んだオランダの時代。
「英学」を取り入れ産業革命を追いかけたイギリスの時代。

日本は「島国」で「鎖国」をしてはいましたが、
常に世界中にアンテナを張り巡らし、
その時代の先端を行く国の言語を学び、教養と見識を得ていました。

多くの国家や民族が滅ぼされた「大航海時代」の最中も、
情報収集と強かな交渉を続け、国を守り抜き、
世界と伍する国を築き上げました。

当時、日本を世界に発信しながら活躍した、
新渡戸稲造(武士道)、岡倉天心(茶の本)、内村鑑三(代表的日本人)をはじめとする逸材は、
格調高い完璧な英語で書物を書き上げ、世界を感嘆させました。

英語という言語そのものも、
彼らにとっては西洋の思想や価値観を知り、
そして日本を発信する目的のためのメディアでした。

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それから1世紀が経った今、
日本の英語教育は、目的を失い雰囲気主義に迷走しています。
パターンプラクティスが繰り返される英会話スクールは、
発音やフレーズなど表面的な要素ばかりをフィーチャーし
「カラオケBOX」化しています。
最高得点には『ネイティブレベル』が設定され、
「ネイティブを真似て、ネイティブのように”唄う”」ことが目指されています。

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そうした、日本独特の英会話サブカル・レジャーも終焉を迎えつつあります。
変化し続ける世界のダイナミズムの中、
日本人も世界と自分たちのズレに気づき始めてきました。

世界の人々は、多くの言語を身につけることで、
多様なperspectives(モノの見方)を養っています。
日本人には「英会話」により「幼児化現象」がもたらされました。

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全ての言語には、そこに生きる人々の考え方や感じ方、
そして言語が育まれた文化や風土が内在します。

そうした言語の中に潜在的に作用している文化や価値観は、その言語の「OS」と言えます。
そうした様々な「OS」を、自分の中で最適化することで、
異文化間コミュニケーションのパフォーマンスが高まります。
ひいては自分の母語にも進化をもたらせ自身のトータル的なパフォーマンスを高めます。

言語表面のコピペを繰り返すことを止め、
言語に内在する本質を考え、自分の言語・文化と比較しながら自分に取り込むことを意識する。
そうした言語学習は、知性、感性、霊性、人格を育み人間的な成長へと導きます。

「ペラペラ英会話」とは比較にならないほどの価値を生み出し、
さらには、「ネイティブスピーカー」以上のハイレベル&ハイコンテクストな
コミュニケーターになることが可能です。

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「稽古」というのは古(いにしえ)を稽(くらべてかんがえる)ことだそうです。
つまり古を学び、今に照らし今を生きる自分のマインドセットを見いだすということです。

令和という新しい時代を迎え、皆様には今一度「稽古照今」により
新しい語学学習を見出していただきたいと願っています。


語学により五感を発達させ、たくさんの新しい発見を楽しんで頂き、
常に知的好奇心を満たし
ご自身の言語OSをアップグレードし続けていただきたいと願っています。

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昭和の戦後に生まれたもはやレトロな響きをもつ「英会話」。

「もはや戦後ではない」という時代錯誤なフレーズは、
皮肉にも英語教育においては、新鮮な響きを覚えます。

「脱英会話」。

Weは、日本の英語教育のやり直しに全力で挑みます。


株式会社ウィー代表 樽石幸治